●子宮内膜症●

内膜症は不妊の原因となりやすいということをご存知ですか?

子宮内膜とは子宮の内側を覆っている膜で、女性ホルモンの周期によって月一回脱落します。
これが月経となります。通常の月経では脱落した子宮内膜は月経血として陰道に排出されます。
しかし内膜症は、何らかの原因により子宮内膜組織が子宮以外の骨盤腔内に飛び出し、
増殖し脱落するために出血を繰り返してしまいます。

子宮内膜症について、中医学では下腹部の骨盤腔内に強い血?(停滞した血液)があると考えます。
下腹部の血行不良により、血液が運ぶ栄養素や酸素が充分に供給されず、腰・腹部・子宮・
卵巣周囲・下肢の深部などの冷えとなります。
また、循環不良により老廃物も溜まりやすくなり、排卵時や卵が育つためなどの様々なホルモン
分泌障害なども起こします。
ホルモンは子宮内膜の厚さや軟らかさに影響を与えるため、着床しにくい、流産しやすい体質に
なるなどの原因とも考えられています。


1)子宮内膜と他組織の親和性
内膜には粘着性があります。よって繰り返し出血・増殖することで周囲の組織に癒着を起こします。
癒着した周囲の組織は気・血・水の循環不良をおこし、局所の虚血や器官の機能低下、炎症症状
などを起こしやすくなります。

2)子宮内膜症の発生しやすい部位
  卵巣・卵管周囲・子宮周囲・子宮壁・腸や膀胱

3)子宮内膜症の症状
生理前に少量の出血を伴う事もあります。
生理前1~3日前から腰・尻・尾部・会陰部・肛門部・下腹部などが痛み始め、生理1~2日目には非常に
激しい腹痛とともに生理痛が引き起こされます。
生理の量が多く、生理の期間が長い、月経血の色は黒く、血の塊が混じることが多い、ドロドロしていて
サラサラではない、排便痛・排尿痛・性交痛なども
あります。

●子宮筋腫●

子宮は3層の壁があり、内側から「子宮内膜」→「子宮筋層」→「子宮外膜(腹膜)」という順番で並んでいます。
この中の子宮筋層を形成しているのが、「平滑筋」という種類の筋肉です。
子宮筋腫とは、この子宮平滑筋層由来の良性腫瘍で、女性の腫瘍全体の中で最も多いタイプです。

この子宮筋層は、女性ホルモンの一つである「エストロゲン」というホルモンの働きにより、妊娠するとだんだん
大きくなり、赤ちゃんの受け入れ準備を
整えます。子宮筋腫の発生原因はまだはっきりしませんが、エストロゲンに反応すると考えられており、妊娠中に
大きくなることが多く、閉経後は縮小します。

筋腫の発生部位により、
(1)筋層内(子宮筋層の中)
(2)粘膜(内膜)下(子宮内膜と子宮筋層の間)
(3)漿膜下(子宮筋層と子宮外膜の間)
に分けられます。中でも、粘膜下筋腫の場合、受精卵が着床しづらくなったり、筋腫が大きくなることで、胎児の成長に
影響すると考えられています。

東洋医学では、西洋医学とは違う診方をします。
子宮筋腫の場合、『気』や『血』の滞りが起こることで、「?血」という状態になることが影響していると考えます。
ですが、"なぜ、そのようになったか"という原因は人それぞれ違います。
また、同じ人でも、日々体は変化するため、その変化を見極めて、不足している気血を補い、多すぎる気血は外に出すと
いう調整を行うことで、本来人が持つ自然治癒力を最大限発揮できる環境を作ります。

●子宮腺筋症●

子宮腺筋症とは、何らかの原因により、通常子宮腔内にある子宮内膜様組織が子宮筋層内にまで存在し、周囲筋層に
炎症をきたす疾患です。

子宮内膜症と同じように女性ホルモンの一種であるエストロゲン作用で増殖し、子宮内膜様組織が月経のたびに増殖・
剥離を繰り返すことに
よって様々な症状を起こします。

子宮内膜症との違いは、この内膜様組織の生じる場所で、子宮腺筋症は筋層内、子宮内膜症は子宮腔内以外の場所と
なります。
また子宮腺筋症と同じ場所の筋層内に良性腫瘍が生じる疾患として子宮筋腫があります。子宮腺筋症は、これら子宮内
膜症・子宮筋腫と合併することが多いとも言われています。

主な症状としては強い月経痛・過多月経・月経期間の延長などがあげられますが、月経痛に関しては子宮腺筋症のほうが
子宮内膜症に比べ強い傾向があります。
また子宮内膜症とは違い、子宮のなかで病巣が増殖するため子宮肥大がよくみられ、それにより子宮内膜の面積も広くなり、
過多月経となります。
この過多月経や月経期間の延長などにより貧血をおこす場合もあります。

好発年齢は30代後半から40代の経産婦と言われていますが、最近では20代から30代前半の未産婦にも増えてきています。

妊娠にとって大切な子宮に子宮腺筋症がある場合、子宮の動き(収縮)が悪くなるため循環障害となり着床しにくくなります。
したがって早期治療が大切となるのです。

東洋医学の鍼灸・経絡治療としては、子宮関連のツボ・経絡を刺激し気血循環を良好にします。また老廃物なども排出しやすくし、
体の環境を改善していきます。


●子宮頸疾患●

子宮はなすび、あるいは人の頭の様な形をしています。解剖学的に子宮の首の部分を「子宮頸部」、頭の部分を「子宮体部」と
呼びます。
癌の発生部位が前者の場合は「子宮頸癌」、後者の場合は「子宮体癌」に分けられます。子宮頸癌と子宮体癌は、子宮という
同じ臓器に発生しながらも、全く異なる癌なのです。

・子宮頚癌
子宮頚部に発生した悪性腫瘍であり、女性生殖器癌の中では最も頻度が高いとされています。多産婦に多く、好発年齢は
40代ですが、30代では乳癌よりも子宮頚癌の方が発症率がかなり高いのが現状です。自覚症状として、不正性器出血、
おりもの、腰背部痛を伴う事が挙げられます。

・子宮頸管炎
経産婦の約60%に見られます。これは頸管粘膜の炎症で、単独で起こることは稀ですが、多くの場合腟炎などから上行感染で
広がります。
子宮頸管は、腟を介して外界と直接通じている事や、分娩や人工妊娠中絶時に頸管損傷を生じやすい事、また感染に比較的
弱い子宮腟部
びらんが頸管の入口に存在する事などから、腟と同様に女性性器の中で最も感染を受けやすい所です。
クラミジアの感染によるものは、日本を含めた先進諸国で大流行があると言われており、慢性化すると子宮内膜症や不妊症を
引き起こすこともあります。炎症によって頸管粘液に異常をきたし、精子の侵入を妨げる原因にもなります。

・子宮頸管ポリープ
良性腫瘍ですので、ポリープ自体が癌化することはありませんが、必ず根元から切除するようです。
妊娠を経験したあらゆる年代に起きますが、30代~50代の女性によく発生します。
接触出血が起こりますが、それ以外自覚症状はほとんどありません。子宮頸部の粘膜細胞が、炎症をきっかけに増え、
茎をもったできものとして頸部から子宮の出口へ飛び出した物です。痛みはなく、妊娠・出産には全く問題はありません。
しかし、ポリープが精子の通過を邪魔する状態になると不妊の原因となってしまいます。

「女性の命を守る事は少子化問題の観点からも重要」として、子宮頸癌予防の為にワクチンを学校で集団接種する取り組みが
2009年秋から始まりました。子宮頸癌は性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)感染によって起きると言われています。
ワクチン接種によって予防できる唯一の癌との事ですが、接種は計3回必要で、費用が高額の為、各地で公費助成を求める
声が高まっています。ある市では接種費用を全額負担するようで、小学6年女児のうち98.5%が接種を希望していたそうです。